意外なヘルスケア術 from LA 笑いが妙薬。セラピーとしての即興コメディ芸、インプロブが話題。

世界は愉快 2022.10.25

稲石千奈美

不安障害や鬱などの心理・精神的障害を持つ人が、5人または4人にひとりはいるアメリカでは、健康診断や予診などでメンタルヘルスチェックを標準化する動きが進んでいる。健康診断時に「定期的に運動をしていますか?」「喫煙、飲酒はしますか?」などの定番の質問に続いて「憂鬱な気分になることがありますか?」「生きていたくないと考えることがありますか?」等を尋ねられる。近年ではコロナやインフレ、社会分断、構造的差別などストレス要因が積み重なり、子どもから成人まで精神的な負担を感じる人が増加していると毎日の生活で感じる。

メンタルヘルス危機の深刻化に伴い、精神状態の定期的なチェック、症状の認識や教育が話題となり、全国的なメンタルヘルス専用の緊急事態フリーダイヤル988番の設定や、オンラインでのセラピーセッションが健康保険に追加されたり、会社や学校がマインドフルネスやメンタルヘルスプログラムを提供するなどの対策がみられるようになった。

中でも新たなアプローチとして注目したいのが、不安症や鬱のセラピーにインプロブ=即興コメディを取り入れるプログラム。お笑い芸人が教える講座、心理セラピストによるグループセッション、ハイブリッド型などさまざまな試みに参加する人が増えている。与えられたテーマに対して即興でストーリーを作り、一人またはグループでパフォーマンスする。精神障害がなくても勇気のいる芸だ。全米数都市に劇場を持つ「セカンドシティ」では、一般コミュニティを対象とした「Improv for Anxiety(不安障害のための即興コメディ)1〜4」をウェルネス講座で提供している。プロコメディアンが教える7週間のグループワークショップでは、対人恐怖症や不安障害に悩む参加者が即興コメディ芸の習得を通してストレスや不安解消の方法を学ぶ。コースはインプロブの芸に応じてレベル1から4まである。

コロラド州の臨床心理師・心理療法セラピストとインプロブコメディアンが共同で運営する「コメディ イズ セラピー」と「インプロブコネクト」は、グループカウンセリングで参加者の信頼を築き、精神障害について学びつつ、徐々にインプロブゲームやエクササイズを重ねる。マインドフルな「いま、この時間」を強調し、批判や評価を恐れずに自分の意思を伝え、不安症解消やストレス軽減を目指す。

コロナ以降、オンラインもできたインプロブコメディセラピー。より多くの人へのアクセスが容易になって、ストレスや不安解消に貢献しそうだ。

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「コメディ イズ セラピー」と「インプロブコネクト」の即興芸セッションでは、“いま”のコミュニケーションにフォーカスしてパフォーマンスするスキル、 どこにでも応用できる対人コミュニケーションスキルを楽しみながら学ぶことができる。

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ロサンゼルスのImprov-LAでは、今年から不安障害のためのインプロブ講座をスタート。インストラクターはコメ ディアンのジャナ・ブライス・ショーと臨床心理医師のマーク・グッドマンだ。

 

コメディ イズ セラピー : http://www.comedyistherapy.com/
インプロブ コネクト : http://www.improvconnect.com/ 
セカンド シティ :https://www.secondcity.com/classes/chicago/improv-anxiety-level-1/

text:Chinami Inaishi

稲石千奈美

在LAカルチャーコレスポンデント。多様性みなぎる都会とゆるりとした自然が当然のように日常で交差するシティ・オブ・エンジェルスがたまらなく好き。アーティストのアトリエからNASA研究室まで、ジャーナリストの特権ありきで見聞するストーリーをエディトリアルやドキュメンタリーで共有できることを幸せと思い続けている。

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